Archive for September, 2010

A4MMC

September 27th, 2010  |  Published in CS

6月にフランスの Saint-Malo というところで開かれた、 A4MMC という国際ワークショップで発表してきました。 今さらだけどつらつら書き残しておこうと。

ポイント:

  • 初めての英語での発表だった
  • contribution, contribution, contribution!
  • アプリケーションはまだ模索中

A4MMC とは

Applications for Multi/Many Core で A4MMC です。 ISCA というコンピュータアーキテクチャについての国際会議があって、それの併設ワークショップ。マルチコアとかメニーコアとかになってくるけど、じゃあどんなアプリケーションがあるの? という問いに対して、各自アプリケーションを持ちよって発表する、というのがテーマで、今回のが第1回目。 セッションは Cell, GPU, その他 に分かれていて、半日のこじんまりとしたワークショップだった。 採択率は full paper が 7/8 (87%) とだいぶ緩い.. ぼくは half paper として出していて、そっちの採択率は 1/6 (16%) 。全体としては 8/14 (57%)。

初めての英語での発表だった

いやー、さすがに緊張しました。日本語での発表ならなんだかんだで回数重ねてるからなんとでもなるんだけど、英語でしゃべるとかまるで勝手が分からない。15分発表のつもりで用意していたんだけど、当日「10分発表、3分質疑ね」と言われて、ぜんぜん調整できなかった。場数がいるな… ぱたぱたと焦ってしまって、ストーリーを十分に伝えることができなかったのが 反省点。

あと、ちゃんと練習せねばだ。しゃべることは Keynote のメモに書いていて、 iPhone の Keynote remote アプリからカンペとして読んでいたんだけど、やっぱり読み上げプレゼンは伝わらない。日本語でしゃべる場合だと、メモにキーワードだけ書いておいて、しゃべってる最中に文章を組み立てる、というのはアリなんだけれど、英語だとまだその場でさっと文章が浮かばないのがまずいところ。

なので、やるべきは 1. しゃべる英文を丸暗記、 2. 英文をとっさに思いつけるようになる 、の2つ。 2 を目標としながら、 1 でしのぐ、が現実的かな。

質疑応答のときにはいちおう、聞かれたことに対してささっと拙い英文を返すことはできたので、進歩してはいるのだ… では、どうやって即時応答ができるようになってきたかというと、単に量の問題な気がする。国際会議にちょこちょこと足を運んでノリをつかんだり、レセプションに飛び込んだり。ふつうの英会話と同じ。詳しくない話題で盛り上がっている場で受け答えするならいざしらず、発表したことについての質問ならこれまで散々考えてきたことだから答えられないわけはない。

contribution, contribution, contribution!

発表した後の質疑は、「これは Cell でしか動かないの?」「私たちにも使えるようになるの?」といったものでした。つまり、「こんなものをつくったよ」「それはナイスだね。で、我々のコミュニティに対してどういう貢献になるの?」ということだと思う。

当たり前なんだけど、ただ発表するだけじゃ自己満足でしかなくて、そこで得られた知見をどうコミュニティに活かせるか、という視点が足りなかったなーと。研究だけじゃなくて、どんなコミュニティでも言える。この視点が足りなかったから、「一見さん」ぽい立場からいま一歩出ることができなかったんじゃないかな。

学会とか何かのコミュニティに初めて参加したときに感じる「一見さん」感というのがある。周りの人たちはそれぞれに楽しそうに談笑していて、自分がなんかぴたりとはまっていない感じ。

そういうときは発表してしまうに限るんだけど、その内容がコミュニティに対してどれだけインパクトがあるか。を考えておくとよいなーと。

あと、継続して貢献することがキモだなと。点をつなげて線にする。複利効果も期待できる。すごく fundamental なこととかだと単発でもいいんだろうけど、凡人のぼくはホームランを狙うよりヒットでつなげたい。あぁこれはオープンソース活動とかだと当たり前なんだろうな。

アプリケーションはまだ模索中

ワークショップの内容について書いてなかった.. そもそも、並列処理能力を活かせるアプリケーションはどんなものがあるか、というのを知るのが目的で参加していたのでした。けど今回の結論としては、まだみんな模索中だなーというところ。

プランクトンのシミュレーション、巨大望遠鏡、といったアカデミックなアプリケーションというのがまずあり。こういう系は、これまでにあったアプリケーションの規模を大きくするというものなので、あんまり新しい感じはしない。他の発表は、 GPU を MPI でつなぐ、とかオレの FPGA で CUDA を動かしたぜ、とかいう話でこれまたユーザレベルのアプリケーションっていう感じじゃない。

たぶん、もっと他の分野の人たちとの交わりが必要なんだろうなー。じっさいに困っている問題を抱えている人といっしょに仕事をする、という。自分たちの世界で考えてしまうと、どうしてもこれまでの延長になってしまいがちだ。コンピュータを (意識せずにせよ) を使っていて、遅くて困っていることってなんだろう?

そのほか

先に出席していた HotPar ’10 で話した人がちょこちょこといて、声をかけてもらったり、声をかけたりできたのがよかった。点がつながる感じがするよね。継続的にコミュニティに参加して、コミットしていくことが大事だな。

あとは、TGV のチケットがなかなか買えなくてやきもきしたり、ホテルの近辺が城塞都市メルキドっぽかったり、帰りのフライトの日にストライキが決行されて帰るのがやばかったりした。

まとめ

英語の発表、もっと数をこなそう。コミュニティへの継続的な貢献がつながりになる。日没が遅いのは文化に大きな影響を与えるる。

かれこれ1年ほどやってきた研究者もどきの生活もこれで一区切り。これからはまた開発者生活にもどります 。

HotPar ’10

September 7th, 2010  |  Published in CS

6月のことですが、 HotPar ’10 というワークショップに参加していました。

ポイント:

  • 逃げ場がないことのは大事
  • ライブ感

HotPar とは

HotPar そのものについて。 Hot topics in Parallelism というテーマで、 2009 年からはじまった国際ワークショップです。いまのところ、2年連続でバークレーにて開催されています。 で有名なパターソンさんが取りまとめてる。

面白いのは、 参加するなら論文書いてこい というところでしょうか。手ぶらの参加はなしです。これは、コミュニケーションの始めやすさにつながっていてナイスだと思いました。採択率は、論文で 16/68、ポスターで 20/52。1st author 以外も来ていたので、けっきょく50-60人くらいが参加していた。

企業からと学生とが半々くらいで、学生の人たちはたいていどこかの会社 (Intel, Microsoft, EA, …) にインターンに行っていた。日本からはぼくだけ。

やるしかない

自分は、2009年の初回にふつうの聴講者として参加していて、今回はポスター発表するという位置づけ。2009年のときは聴くだけの立場でしかなくて、透明人間になったような辛さがあった。自分がどんなものを持っているのか、誰にでも分かるかたちで見せることができないとダメだと思ったものです。今年はそのリベンジ。世界で動けるように。

そういうわけで、論文を出し、けっきょくポスターとして通った。初日の最後に LT みたいにしてポスター発表者全員が30秒でポスター紹介をプレゼンする、という時間があり、短いながらも初めての英語スピーチをした。すごくあたふたする… いろいろ準備を考えるんだけど、けっきょくしゃべりだしたら思ってたことの3割くらいしか言えないものです。

そんな中で思ったのは、 逃げ場がない ということが大事なんだということ。ネットがつながらないから、心地良い外の世界に逃避できないし、自分しか日本語話者がいないから英語でしゃべらざるを得ないし、他にごはんの手段がないのでテーブルにつかざるを得ない。テーブルについたら、こちらから何もしゃべらないと1,2時間そのまま、というとてもしんどい状態になるので、なんとかして絡んでいくようになる。まぁそうはいっても雑談はむずいわ…

最初に話さないと、ずっと話さない。まず当たっていくことを心がけようとか。軽い話題 (いつから来た、どこから来た) から入って、専門分野の話 (何やってるの、何がいちばん難しい問題なの?) にもって行く、というパターンを覚えたりとか。

そもそも、自分はカンファレンスや勉強会に参加してもロクにしゃべることがなかったんだけど、ここ 2,3年の積み重ねでだいぶコミュ力が培われてきたんだなーという実感。

とはいえ、英語圏のパーティはやはりノリが違うし、まだまだむずいですね… 雑談力を身につけたい。 と同時に、自分の中に、じっくりと考えぬいたものがないと、けっきょくただのおしゃべりにしかならない。深みが魅力になる。やるべきことはまだまだ、まだまだある。

よかったこと

ポスターセッションは、一杯ひっかけながらポスターについてああだこうだと議論する、というスタイルだったこともあり、よく話せた。あまり考えずにしゃべるようになるというか、勢いづくというか。コミュニケーションツールとしてのワインとポスターというのがある。

あと、わりとアジア圏の研究者とはよく話したな。似たもの同士感があるんだろうか? 英語ラクじゃないよね、とか学校でたあとは国に帰るの? (No) とか、そういう話を夜遅くまでしていた。

チャレンジすること

話したものの、その場で終わりになってしまいがちなので、ネットワークを広げたい。たとえば、これに参加したあと、続けて ISCA ’10 というカンファレンスにも出席したんだけど、そこで「ああ、 HotPar でもいたよね、ひさしぶり」といった風に会話が始まることが2,3度あった。コミュニティによく出入りして、アウトプットを出し続けることだな。

あとは考える深さとスピード、雑談力, …

おもしろかったところ

その場でのコミュニケーション、によく気が配られていた。

ランチのときに、各テーブルにトピックがあって (並列デバッグどうやる? アプリはどんなのがある? どう教育する? などなど)、参加者はめいめい好きなトピックを選んで座る。で、ごはんを食べながら 1.5 時間くらいそのトピックについてしゃべる。このスタイルは、学会とか勉強会などで有効なんじゃないかな。初対面の者どうしが同席して話し始めるきっかけとして。コミュニケーションツールとしてのランチディスカッション。

あと、会場ではインターネットが使えない。 Wifi も電源も提供されていない。パターソン曰く「Wifi はここにはないよ。数百ドルも出して参加するカンファレンスで、席に座ってやっていることといったら話も聞かずメールチェック、ではなんとももったいないじゃないか。ディスカッションに参加しよう」。まったくだなー、と。ライブ感、参加している場にある価値といったものが、ネットで損なわれてしまいがちなんだ。

会場はちょっとダウンタウンから離れてるし、近くに店もなく、合宿みたいなノリだった。泊まった部屋もルームシェアリングになっていて、とにかくコミュニケーションが促進された2日間だったな。

ああ、ぜんぜん技術的なことを書いていなかった。主流は、 性能よりも生産性を というところにあったと思う。 100% カリカリに並列プログラムをチューニングするのはコストがかかりすぎるし、人にまるでやさしくない。 80% の性能しか出ないけど、人が考えやすいモデル、というのが今の方向性なんだろう。


出て行って交わると、自分の研究者としての能力がどれくらいか、というのがよく分かる。井の中の蛙にならないように、あっちこっちでアウトプットしないとだな。

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